インテリア家具ショップのリグナが送る、ライフスタイルWEBマガジン
気になるお店の家具あれこれ

文・取材=大森菜央

第4回
2016.08.17

つながりを育む場所 つくし文具店

JR中央線・国立駅からのんびり歩いて20分ほど。閑静な住宅地の中、歩を進めていくと、モッコウバラの蔓に覆われた一軒家に出合います。ここが今回ご紹介する「つくし文具店」。2代目店主を務めるデザインディレクター・萩原修さんの実家であり、もともとは萩原さんのお母様が同じ場所で文具店を営んでいたそう。1964年に開いた文具店は、近隣の子どもたちのコミュニティスペースとして、大人たちのおしゃべりの場として、さらにはクリーニングの取次や選挙事務所として、1990年頃に一度幕を下ろすまで地域の拠点として愛されてきました。その約3坪の小さな空間を、店の名前もそのまま受け継ぎ、萩原さんが2005年にリニューアルオープン。生まれ変わった「つくし文具店」の在り方は、当時の佇まいをいかした内装にも反映されているようです。

イメージはドイツのデザイン学校「バウハウス」

「つくし文具店」をリニューアルオープンするにあたり、お店のデザインはどのように手を加えられたのですか?

黒板には日付とお店番をする日直の名前が。横の棚にあるのはオリジナルの文具吉川:基本的にスペースの構造はそのままなんです。使える部分はいかしながら、外壁や内装の壁、床を塗り直し、新たに什器を設置していきました。店舗デザインをお願いしたのはデザインユニット・ドリルデザイン。「国分寺市立第三中学校」近くの文具店ということもあり、ドイツでデザインに関する総合的な教育を行った「バウハウス」を意識し、赤・青・黄の三原色を用いたカラーリングにしたんですね。外にある車止めの黄色とポストの赤から、軒先に掲げるロゴマークの旗は青しかないとドリルデザインの林裕輔さんは結論付けたそう。外壁はそれらの色が映える薄いグレー。店内の大きな黒板も、DMなどを貼っている掲示板も、黒板の脇にあるシンクも、“教室”というモチーフからきています。

文具やデザインをテーマにした、まさに“学校”のような試みも面白いですね。

白い壁は珪藻土で塗り、床はモルタルで仕上げたそう。掲示板も空間をサポート吉川:リニューアルの際に掲げたのは「つながる くらしと しごと」。住まいでも職場でもなく、それらが交じり合うような、ちょっと寄り道したくなる場になればいいなと考えました。最初の5年間くらいは交流のあるデザイナーを先生に迎えてアットホームな授業を開催したり、展覧会を開いたりしていたんですね。2012年からは「ちいさなデザイン教室」をはじめて、今年のメンバーで第5期生。月に1度「つくし文具店」に集まり、デザインを使い暮らしの中でできることをみんなで模索し、学び、実践しています。生徒は日直として「つくし文具店」のお店番もしているんですよ。住宅街って、通常は住んでいる人しかいないんです。でもここにお店があることで、地域以外からも人が来る。そうすると街の表情も変わるだろうし、新しい何かが生まれる気がするんですね。街をひらく店でありたいと思っています。

デザインを通じて生まれる交流と新しい試み

店内を彩る文具も「つくし文具店」ならではのラインナップです。

中央が商品陳列台にもベンチにもなる什器。大きな天板を載せて利用することも吉川:中央のテーブルに並べているのは「つくし文具店」のオリジナル。ドリルデザインと一緒にえんぴつやノート、ペンケースなど、大人が「使いたい」と感じられる日常に寄り添う文具を提案しています。実はこのテーブル、3台のベンチをつなげたものなんですよ。ドリルデザインがデザインしたもので、座ったり什器にしたりと用途に応じて使い分けをしているんです。壁の棚に陳列しているのは、修さんがプロデューサーを務める「かみの工作所」や「カミプレ」のプロダクトをはじめ、仲のよいデザイナーが手掛けた製品や編集に携わった本など。やはり文具店ですから、ステーショナリー関連のものが多いですね。棚は昔からあったものを塗り直して使用しています。

リオープンし、2016年で11年目。これから目指す方向性についてお聞かせください。

お話をおうかがいしたマネージャーの吉川友紀子さん。在庫置場にもなっている日直スペースにて吉川:自分たちにできることを、持続可能なかたちで少しずつ広げていきたいですね。8月は「ちいさなデザイン教室」の生徒によるイベント月間で、日直がお店番をしながらワークショップやライブなどを開催しています。さらに期間中は近年恒例のこども日直もお店に立っているんですよ。開店準備から接客、お会計など、大人の日直とともに行うお店番体験。毎年参加してくださるお子さんもいて、会う度に大きくなっているから成長も楽しみなんです(笑)。修さんも私も、デザインには地域や社会をよりよくしていける力があると信じているんですね。それをもっともっと発信し、伝えていけたらいいなと思っています。お散歩がてら、ふらりと遊びにきていただけたら嬉しいですね。

(店舗写真=益永研司)

つくし文具店

〒185-0035 東京都国分寺市西町2-21-7

TEL:042-537-7123

http://www.tsu-ku-shi.net

大森菜央(おおもり・なお)

編集者・ライター。出版社勤務を経てフリーランスに。

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